読みもの
中小企業診断士を学んだ人が、FP2級で新しく学ぶのは何か(財務・会計+経営法務との公式シラバス対照・2026年版)
中小企業診断士とFPは、通信講座各社が「ダブルライセンス」としてよく並べる組み合わせです。では診断士の1次試験を学んだ人がFP2級の学科を受けるとき、本当に新しく学ぶのはどこか。診断士の「財務・会計」と「経営法務」の試験案内と、FP2級 学科の試験範囲(6分野の細目)を同じ論点表で突き合わせると、FP2級側の10+3+9論点のうち、同等以上が10、一段深く出るのが3、新しいのが9でした。重なるのは「法人・金融・会社法」の側で、新しいのは「個人の暮らしのお金」の側です。
対照の仕方
診断士側は、中小企業診断協会の令和8年度 第1次試験案内「13.試験科目設置の目的と内容」の「2.財務・会計」(p.12-13)と「5.経営法務」(p.17-18)。FP側は、日本FP協会が公表する2級 試験範囲(学科試験の6分野 A〜F とその細目)。取得日はいずれも2026年10月6日です。FPの細目は「社会保険」「公的年金」のような項目名だけが公表されているため、深さの判定は「計算を含む分野=2、用語・制度の理解=1」を基本に運営が行い、各行に根拠の細目名を付けました。診断士の「経済学・経済政策」「企業経営理論」「中小企業経営・政策」は今回の対照に入れていません(金利・景気指標や中小企業施策の重なりは、これらの科目を台帳に加えた時点で表に反映します)。
診断士の知識でそのまま同等以上の10論点
| 論点 | 対象での深さ | 手持ちの最大深さ | 対象シラバスの参照 |
|---|---|---|---|
| 損益計算書・貸借対照表の構造と区分表示 | 1 | 2 | D タックスプランニング > 決算書と法人税申告書 |
| 税務会計(益金・損金・課税所得・税効果) | 1 | 2 | D タックスプランニング > 法人税/法人住民税/法人事業税/消費税/会社、役員間および会社間の税務 |
| 資金繰り・運転資金・フリー・キャッシュ・フローの管理 | 1 | 2 | A ライフプランニングと資金計画 > 中小法人の資金計画 |
| 資金調達の形態(直接・間接金融、自己・他人資本、企業間信用、リース) | 1 | 2 | A ライフプランニングと資金計画 > 中小法人の資金計画 |
| 貨幣の時間価値と投資評価(NPV・IRR・回収期間法・会計的利益率法) | 1 | 3 | A ライフプランニングと資金計画 > ライフプランニングの考え方・手法 |
| ポートフォリオ理論と資本市場理論(CAPM・効率的市場) | 1 | 3 | C 金融資産運用 > ポートフォリオ運用 |
| 企業価値・株主価値の評価(DDM・PER・PBR・DCF・マルチプル) | 1 | 3 | C 金融資産運用 > 株式投資 |
| デリバティブとリスク管理(オプション・先物・為替予約・スワップ) | 1 | 2 | C 金融資産運用 > 金融派生商品/外貨建商品 |
| 民法(物権・債権)と不動産取引の法律 | 1 | 2 | E 不動産 > 不動産の取引/不動産に関する法令上の規制 |
| 金融商品取引法・消費者保護・関連法規 | 1 | 1 | C 金融資産運用 > 関連法規/セーフティネット |
- 金融資産運用(C)の理論部分: ポートフォリオ運用、株式の投資指標、金融派生商品は、診断士「財務・会計」の (9) 証券投資・(10) 企業価値・(11) デリバティブで深さ3まで学んでいます。FP2級では用語と基本の計算(1)なので、そのまま使えます。
- 法人の税と決算書(D): 法人税・法人事業税・消費税、決算書と法人税申告書は、診断士 (3) 税務会計の基礎(益金と損金、課税所得と税額の計算)と (2) 企業会計の基礎で学ぶ範囲です。
- 中小法人の資金計画(A-9): FP2級で3級に無い細目の1つで、診断士 (6) 利益と資金の管理・(7) 資金調達と配当政策の範囲そのものです。
- 金融商品取引法・消費者契約法などの関連法規(C-12)と不動産取引の民法部分(E-2, E-3): 経営法務 (4) 企業活動に関する法律知識(民法の物権・債権、金融商品取引法、消費者保護法)で触れています。ただし不動産の「取引」の多くは宅建業法・借地借家法・区分所有法で、これは次の「新しい論点」側の E 不動産に入れました。
診断士で触れているが、FP2級ではもう一段深く出る3論点
| 論点 | 対象での深さ | 手持ちの最大深さ | 対象シラバスの参照 |
|---|---|---|---|
| 相続・贈与の法律(民法 相続) | 2 | 1 | F 相続・事業承継 > 贈与と法律/相続と法律 |
| 事業承継(経営承継円滑化法・事業承継対策) | 2 | 1 | F 相続・事業承継 > 事業承継対策/事業と経営 |
| 社会保険(健康保険・介護保険・労災・雇用保険)と労働保険・社会保険の届出 | 2 | 1 | A ライフプランニングと資金計画 > 社会保険 |
- 相続・贈与の法律(F-1, F-3): 経営法務では「民法(物権、債権、相続)」の一語で、FP2級では法定相続分・遺言・遺留分の計算まで求められます(深さ2)。
- 事業承継(F-9, F-10): 経営法務の「事業承継に関する法(経営承継円滑化法)」は制度の理解(1)。FP2級の「事業承継対策」「事業と経営」は、自社株評価と納税の対策まで含みます。
- 社会保険(A-4): 経営法務では「労働保険・社会保険の届出」として事業者側の手続に触れるだけ(1)。FP2級は健康保険・介護保険・労災・雇用保険の給付の仕組みと計算(2)が本体です。
まったく新しい9論点
| 論点 | 対象での深さ | 手持ちの最大深さ | 対象シラバスの参照 |
|---|---|---|---|
| ライフプランニングの考え方・手法・資金計画(FPの倫理・関連法規、ローンとカード) | 2 | 0 | A ライフプランニングと資金計画 > ファイナンシャル・プランニングと倫理/関連法規/ライフプランニングの考え方・手法/ライフプラン策定上の資金計画/ローンとカード |
| 公的年金・企業年金・個人年金と年金の税金 | 2 | 0 | A ライフプランニングと資金計画 > 公的年金/企業年金・個人年金等/年金と税金 |
| リスクマネジメントと保険(生命保険・損害保険・第三分野) | 2 | 0 | B リスク管理 |
| マーケット環境の理解(金利・為替・景気指標) | 1 | 0 | C 金融資産運用 > マーケット環境の理解 |
| 預貯金・投資信託・債券・外貨建商品 | 2 | 0 | C 金融資産運用 > 預貯金・金融類似商品等/投資信託/債券投資/外貨建商品/保険商品 |
| 金融商品と税金・セーフティネット | 1 | 0 | C 金融資産運用 > 金融商品と税金/セーフティネット |
| 所得税・個人住民税・個人事業税(各種所得・損益通算・控除・申告) | 2 | 0 | D タックスプランニング > わが国の税制/所得税の仕組み/各種所得の内容/損益通算/所得控除/税額控除/所得税の申告と納付/個人住民税/個人事業税 |
| 不動産(見方・取引・法令上の規制・税金・賃貸・有効活用・証券化) | 2 | 0 | E 不動産 |
| 相続税・贈与税と財産評価・相続対策 | 2 | 0 | F 相続・事業承継 > 贈与と税金/相続と税金/相続財産の評価/不動産の相続対策/相続と保険の活用 |
見てのとおり、新しいのは個人のライフプラン・年金・保険・個人の税金・不動産・相続税です。診断士は「企業」を見る資格、FPは「個人と家計」を見る資格なので、この分かれ方は自然です。量としてはFP2級 学科の6分野のうち A(ライフ)・B(リスク)・D(所得税)・E(不動産)・F(相続税)の大半がここに入り、診断士の知識で短縮できるのは C(金融)と、D・F の法人・法律寄りの一部です。
学び方の提案
- C 金融資産運用は確認だけ: 診断士の方が深いので、FP特有の商品知識(投資信託の分類・債券の利回り計算・外貨建商品・NISA等の税制)を細目に沿って足すだけで済みます。
- D タックスは「個人の所得税」を新しく: 法人税は済んでいるので、所得の10分類・損益通算・所得控除・税額控除の順に。
- A・B・E・F は FP の本体として最初から: 年金(老齢・障害・遺族の3給付)→社会保険→保険商品→不動産(取引・法令・税)→相続税と財産評価、の順が計算の積み上げになります。
- F の相続・事業承継は、経営法務の民法と経営承継円滑化法から入ると、診断士の既習が土台になります。
試験の形式(公式の値)
| 試験 | 形式・時間・合格基準 | 直近の実施 | 出典(取得日) |
|---|---|---|---|
| FP技能検定 2級 学科 | CBT・多肢選択式 60問・120分・合格基準 36点以上(60点満点)・学科のみ 5,700円 | 月単位で通年実施(2026年度の休止期間: 5/24〜31、12/28〜2027/1/5、2027/3/25〜31) | 2級・3級試験要綱(日本FP協会)(2026-10-08)/試験日程(2026-10-06) |
| 中小企業診断士 第1次試験「財務・会計」「経営法務」 | 各60分・100点・多肢選択 | 令和8年度は2026年8月1日・2日に実施済み | 令和8年度 第1次試験案内(2026-10-06) |
参考までに、日本FP協会の2級学科の受検者は 2025年4月〜9月が25,387人、2025年10月〜2026年2月が27,310人です(FP技能士の取得者数及び試験結果データ、取得日 2026-10-06。金融財政事情研究会の実施分は含みません)。
手持ちに簿記2級を加えたり、目標を診断士側に入れ替えたりして同じ表を見るには 差分ツール(診断士 財務・会計+経営法務 → FP2級) を使ってください(無料・登録不要)。
出典
- 中小企業診断協会「令和8年度 中小企業診断士 第1次試験案内」13.試験科目設置の目的と内容 2.財務・会計(p.12-13)・5.経営法務(p.17-18) PDF(取得日 2026-10-06)
- 日本FP協会「2級 試験範囲」 jafp.or.jp/exam/subjects_02/(取得日 2026-10-06)/「2級・3級試験要綱」 jafp.or.jp/exam/outline/3fp.shtml(取得日 2026-10-08)
- 対照表のデータは本サイトの差分ツールと同一(論点48×資格5)。FP細目の深さの判定基準は本文「対照の仕方」のとおり。
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